透明境界線

生きていく。詩を書く。

親との過去は、半分だけ許して、もう半分は思い出に変わった。

私の両親は、父は私が21歳の時に、母は30歳の時にふたりとも癌で亡くなった。父が亡くなった時はどこか楽になれた気がしたけれど、そう言えば一緒にお酒を交わしたこともなかったな、と思い出す。頑固でボーダー気質なところが私そっくりだ。
母はあまり感情を表に出さず、優しいけれど厳しく私を否定したり、思えば母自身が愛着障害だったんだろう。『親に甘えたことなんか一度もない』とよく話していたが、親戚のおばさん曰く、末っ子で箱入り娘だと聞いた。
そんな母も脳梗塞で倒れ、腰を骨折して数ヶ月後に余命宣告を受けてからはあっという間だった。毎日看病しに病院に通っていた私も兄も、病院の看護師も、看取ることが出来なかった。一人で生まれて一人で死んだ。

私はそれからの1年2年は両親からの児童期にされた虐待や色んな罵声をあびせられたことを、どうやって許せばいいのか悩みすぎた。死んでからじゃ何もかも遅すぎて、私が過去に犯したことを謝ることも、ありがとうという言葉を発することも、目の前に二人とも生きていないのだ。出来ないんだ。あの時されたことが悲しかったよ、と言うことも出来ないんだ。クヨクヨ悩んでいる時、その時随分とお世話になったカウンセラーに言われたのが、『全部を許さなくていい、許すことが全てじゃない』ということば。これにどれだけ救われただろう。
少しずつ、親とのことを思い出して怒ったりどうでも良くなったり、それらを繰り返していくうちに、辛かった二人との過去が少しずつだけど思い出に変わっていったように思う。許さなくたっていい。
何せ今、思い出した時に懐かしいなあと感じられるようになった。親のいない親孝行だと思っていきたい。